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ドーマン,グレン (Doman, Glenn)

ドーマン,グレン、ドーマン,ダグラス、ヘイギー,ブルース 著、人間能力開発研究所 日本語訳監修、前野律 訳「赤ちゃんの運動能力をどう優秀にするか―誕生から6歳まで」(ドーマン研究所;丸善メイツ〔発売〕、1999年6月26日 第1版第1刷)より

フィラデルフィアにある、世界的に有名な人間能力開発研究所(The Institutes for the Achievement of Human Potential)の創立者。世界各地の子を持つ親たちは、30年以上も前から、道を求めてこの研究所を訪れている。同研究所は、当初は議論の的であったが現在は高い評価を受けている脳障害児に関する仕事と、あらゆる子どもを優秀にしようと試みる仕事とによって、広く知られている。
グレン・ドーマンは、この40年間に1万5千を超える家族と密に接し、ベストセラーとなり、現在では17カ国語に翻訳されている数々の著書を通じて、何百万もの家族の人生に大きな影響を与えてきた。
How to Teach Your Baby to Read (邦題『赤ちゃんに読みをどう教えるか』)と、What to Do About Your Brain-Injured Child (邦題『親こそ最良の医師』)は、それぞれ健常な子どもと、障害のある子どもの分野の、古典となっている。
グレン・ドーマンは、最も文明の進んだ都会から、最も未開の地にいたるまで、百を超える国々の子どもとともに暮らし、研究し、仕事をしてきた。ブラジルのマト・グロッソで前石器時代の暮らしをしている子どもたち、カラハリ砂漠に住むブッシュマンの子どもたち、北極のイヌイットの子どもたちを訪ねて研究をおこなういっぽう、ロンドンから東京まで、ヨハネスブルグからモスクワまで訪れて、文明社会の主要都市の子どもたちにも会ってきた。現在でもその仕事は続いている。
多くの国々で叙勲されたが、その国で最高の栄誉を受けたことも少なくない。最初の叙勲が、歩兵部隊の将校としての功績に対してであり、その後の30年間に受けた栄誉が、生命を救った功績によるものであったのは、皮肉ではあっても彼の性格を考えれば矛盾はない。
第2次世界大戦では目ざましい勇気ある行動を認められ、ジョージ6世より英国の戦功十字勲章を授けられた。さらに、作戦における英雄的行動によりアメリカ合衆国の殊勲十字章を、武装した敵に対する勇敢な行動により銀星章を受けている。バルジ作戦に際してはルクセンブルグ公国に対する功績があったとして、シャーロット大公妃からも叙勲された。
戦時下でのこうした叙勲とは対照的に、1966年には、世界の子どもたちに対する功績を認められて、ブラジル最高の栄誉である南十字星勲爵士を叙勲された。この他にも、子どもたちに対する貢献により、英国、アイルランド、アルゼンチン、ペルー、日本からも叙勲・表彰されている。1971年には、米国鉄鋼労連のレイモンド・A・ダート賞を与えられた。
現在も、新しい答えを求め、教え、執筆するという、過密なスケジュールで活動を続けている。

ドーマン,グレン 著、食野雅子 訳「赤ちゃんに読み方をどう教えるか―親こそ最高の教師」(サイマル出版会、1990年12月 出版、1964年 原典出版)より

人間能力開発研究所会長(米国フィラデルフィア)
脳障害児の治療に画期的な療法を開拓した先駆者として、世界的に著名である。博士の提唱する「穏やかな革命」は、脳障害児の治療実践から幼児の潜在能力の素晴らしさを発見し、幼児の能力開発のための独自のプログラムを創り出したものである。
著書に、日本の障害児の治療と教育に衝撃を与えた『親こそ最良の医師』『幼児は算数を学びたがっている』『子どもの知能は限りなく』(いずれもサイマル出版会)などがあり、ロングセラーを続けている。

日本のすばらしい親たちへ─日本語新版まえがき
(略)
これ以上言うことはないと思うが、最も大事なアドバイスを何か一言でと言われたら、私は次のように言いたい。
楽しく、自然体で行なうこと。そして、テストしないこと。
(1990年9月)
グレン・ドーマン

ドーマン博士のこと─訳者あとがき
この本は、グレン・ドーマン著 How to Teach Your Baby to Read, The Better Baby Press, 1964 の新版(1990年)を訳したものである。
グレン・ドーマン博士と彼が主宰する人間能力開発研究所(アメリカ、フィラデルフィア)の仲間が開発した脳障害の治療法は、今では世界的に知られ、天才騎手とうたわれながらレース中の落馬事故で植物人間となり、ドーマン博士の治療を受けて奇跡的な回復を示した福永洋一騎手をはじめ、日本でも多くの脳障害児がこの方法で機能を回復している。
(略)
またドーマン博士と、鈴木メソッドで世界的な鈴木鎮一先生や、幼児教育の推進者でもある井深大ソニー名誉会長との深い交遊は、広く知られている。
(略)
このような貴重な機会を与えてくださった田村社長と、お世話になったサイマルの方がた、ご協力いただいた人間能力開発研究所の中谷内美紀さんに、心からの謝意を表したい。
(1990年11月)
食野雅子

<著者のことば>
文字を読むことは、人間がもつもっとも高度な機能の一つである。そしてほとんどすべての学習は、読む能力を基礎としている。私たちは、子どもの年齢が低ければ低いほど、楽に学べ、よく読めることに気がついた。1歳で単語を、2歳で文を、3歳で本を読むことができる。それも楽しんで──。

ドーマン,グレン 著、人間能力開発研究所 訳「子どもの知能は限りなく―赤ちゃんからの知性触発法」(サイマル出版会、1988年10月 出版、1964年 原典出版)より

人間能力開発研究所会長(米国フィラデルフィア)
脳障害児の治療に画期的な療法を開拓した先駆者として、世界的に著名である。1940年ペンシルバニア大学物理療法科を卒業後、テンプル大学でフェイ博士と共同研究の後、人間能力開発研究所を創設し、世界各国で脳障害児の治療に優れた成果をおさめてきた。 博士の提唱する「穏やかな革命」は、脳障害児の治療実践から幼児の潜在能力の素晴らしさを発見し、幼児の能力開発のための独自のプログラムを創り出したものである。
著書に、日本の障害児の治療と教育に衝撃を与えた『親こそ最良の医師』『幼児は算数を学びたがっている』(ともにサイマル出版会)などがあり、ロングセラーを続けている。

<著者のことば>
これまで私たちは、子どもの知能を大幅に伸ばしてきた。その間、多くの親と私たちを支えてきたのは、日々の実践から生まれた数々の事実である。簡単に、楽しみながら教えられることは、たくさんある。たとえば─1歳児に読みかた、算数、外国語を……。両親こそ最高の教師である、と伝えたい。

算数の教えかた
《写真説明》
キャスリン・ブラウンと息子フレデリック(1歳11カ月)。フレデリックは誕生と同時に早期開発プログラムを開始。2歳の誕生日の前に1万の単語と知識のビッツを学習し、算数も代数や微積分にまで進んだ。自宅では、コリーン(7歳)、ケティ(6歳)とともに、インターナショナルのカリキュラムに基づいて勉強している。
《khonによる写真描写
40+50÷30=3
と大きく書かれた紙を両手で持ち、幼い息子に笑いかける若い母親。微笑み返す息子。
正しくは(40+50)÷30=3 か 40+50÷30=41.666… ではないのか
と気にする人は誰もいないカーペットが敷き詰められた部屋》

ステップ5─問題を解く
ここまであなたが子どもに何も要求せず、ただ与えるだけでやってこられたのならば、とてもうまくやっているということであり、何のテストもしていないはずである。
さてここでテストではなく、子どもに対し、自分が問題を解く方法がわかっているということを教えてやる(実際に解けるのだということが、あなたにもわかるはずだ)。
まず、数から始める。床に膝をつき、床に座っている子どもと向かいあう。17のドッツ・カードと25のドッツ・カードを子どもの前の床に置いて、25を指すように言う。ごくさりげなく、楽しそうな口調でたずねること。ほんの少しでも、圧迫感を感じさせてはいけない。あなたも子どもも失うものは何ひとつなく、得ることばかりなのだ。
(略)

安斎育郎 著「不思議現象の正体(トリック)を見破る―超能力や心霊現象に、人はなぜ騙されるのか」(河出書房新社、2001年5月10日 初版)より

言葉を理解し、計算する馬の謎

ハインズ,テレンス 著、井山弘幸 訳「ハインズ博士「超科学」をきる―真の科学とニセの科学をわけるもの」(化学同人、1995年3月20日 第1刷)より

5章 実験超心理学のあぶない現場―利口な馬ハンス事件の真相

(略)有名な「利口なハンス」と呼ばれた馬の事件がこの点を明らかにするだろう。ハンスの飼い主は1900年代初め頃ドイツのベルリンに住んでいたフォン・オステンという紳士であった。ハンスは算術計算ができると信じられていて、簡単な質問には蹄を鳴らして答えることができた。たとえば、「64の平方根は」と聞かれると、ハンスは蹄を8回鳴らす。ハンスの特技は多くの人々を魅了し、8歳の人間の知能をもっていると結論された。フォン・オステンはハンスに何らヒントを与えていないと誓ったし、事実、ハンスのこの驚くべき能力を利用して金を稼いだりはしなかった。
しかし心理学者専攻の大学院生であったオスカー・ブフングストは、ハンスの能力に疑いを抱いた。彼は一連の実験を企画し、質問する者が答えを知らなければハンスは正確な答えをだすことができない、ということを証明したのである。
そればかりか、ハンスは質問者の顔が見えないと、答えることすらできなかった。ブフングストは、ハンスの蹄の動きを開始させたり停止させたりする微妙な手がかりがたくさんあることを発見したのだ。質問者がハンスの蹄のほうに視線を落とすとハンスは蹄を叩き始める。頭をあげて顔にある種の表情を浮かべると、それは叩くのをやめる合図となる。そもそも質問などしていなくても、ハンスはそのように反応するのであった。実際ハンスに質問をする場合、観衆はつい蹄に注目してしまう。ハンスはそれを見て喜んで蹄を鳴らし始める。ハンスが“正解”の数だけ鳴らした時、質問者は知らず知らずのうちに頭をあげてハンスと目を合わせてしまう。ハンスはそれを見て足を止める。(略)

ハインズ,テレンス 著、井山弘幸 訳「ハインズ博士「超科学」をきる―真の科学とニセの科学をわけるもの」(化学同人、1996年3月20日 第5刷)より

15章 はびこるいかさま療法

間違いだらけの脳治療
(略)
ペンシルバニア州フィラデルフィアにある人間潜在能力開発研究所のグレン・ドーマンとカール・デラカト(教育学博士)とロバート・ドーマン博士(医学博士)の三人は、パターン化法と呼ぶ治療法を開発した。この方法によれば、児童の脳障害の効果を克服、あるいはもっと正確にいえば回避することができるという。彼らの考えでは、人間の脳の発達は連続した段階を順次経て成長することであり、できあがった大人の脳には各発展段階に対応する領域があるという。彼らの見解にしたがえば、児童における脳の障害は、一つの発展段階が“遮断”されていて、たとえその上の段階に障害がなくてもその“遮断”が解除されるか回避されない限り成長はありえないことになる。ここで問題のパターン化法が導入される。この発想はきわめて単純なものである。遮断領域を克服する、すなわち遮断領域を迂回するには、まだ障害を受けていない次の段階がどんなものかを確認させればよいという。つまり、次に進むべき段階に固有の行動様式を、何度も何度も毎月毎週毎日と繰り返し子供に学習させるのだ。おそらく、この反復学習がはっきりとはわからないもののなんらかの効果を及ぼし、「高次のレベル……の機能を阻害している障壁を乗り越える」結果となるのであろう。このタイプの治療法の背後にある考え方を理解するために、一つ例をあげることにしよう。ドーマンが記述している生後10カ月の乳児メアリーの事例を考えてみよう。メアリーは「耳が聞こえないも同然」の状態にある。しかしメアリーは普通の子供のように、驚かすと反応して思いがけず大きな声をあげる。これは本当は聾でないことを示している。このようにメアリーは通常の驚愕反応を示している。ドーマン−デラカト・システムによれば、驚愕反応は聴覚能力の発達の第一段階にあたっている。したがって、メアリーには高次のレベルの神経組織に“遮断”が生じていることを意味しているのだから、彼らは治療の一環として、何度も何度も繰り返しメアリーを驚かすことになる。とりわけ「母親は毎朝起きてから30分間音をだしてメアリーを刺激した……すなわち、メアリーの耳元で拍子木を叩いてびっくりさせる行為を延々と続けたのである。毎回3秒間隔で10回、これを24日続けたのであった」。
シーンの事例は、実際に行われたこのタイプの治療法の別の一面を教えてくれる。シーンは6歳の男の子であり、“触知能力”の第三段階に支障を生じていた。ドーマン−デラカト・システムでは、これは子供が寒暖の区別をしにくくなっていることを意味する。シーンは触知能力の第二段階までは問題がなかった。こちらは熱と冷の知覚に関係している。第三段階で“遮断”が起きているため、シーンは第四段階の活動ができないでいるのだ。この次の段階は“平面に見える物体の立体性を触って知覚する”ことにかかわっている。では彼らはどのような治療を行ったのか? 母親はシーンに触覚刺激を与えたのである。シーンの両手を交互にぬるま湯と冷水のはいったたらいに入れてやって、その間母親は、こっちは暖かいわね、そっちは冷たいわね、と説明してやるのである。10回手を浸してから、今度は子供の手をよくもんでやり、気持ちいいでしょと母親は声をかける。かくしてシーンは、毎日300回ずつ温水と冷水に手を突っ込み、30回のマッサージを受けたのだ。
話だけ聞いていると、このような治療法は風変わりで効果がありそうに思えないことだろう。このような尋常ならざる回数の刺激がいかにして治療上の効果をもつのか、そして彼らのいう“遮断”がいかにして除かれ回避されるのか、ドーマンは決してこの問題に触れようとしない。そもそも、治療にあたった子供に脳障害があったことの証拠らしきものは一切示されておらず、心理学上の問題である可能性も排除されていないのだ。さらに彼らの治療のすべての計画の出発点となっている「ドーマン−デラカト発展段階表」は、基本的な点で間違った脳組織の理解に基づいている。「発展段階表」では、脳の発達がいくつかの異なる段階にふりわけられ、その段階を人間は順次連続的に進んでいくことになっている。それぞれの発展段階は、脳の特定の部位に結びつけられている。第一段階は脊髄と骨髄であり、第二段階は脳橋と呼ばれる脊髄の上の部分、第三段階は中脳となっている。そして第四から第七までが、順に「初期」、「早期」、「始源期」、「洗練期」の大脳皮質に対応する。そのほかに「能力」の六つの領域もあり、視覚、聴覚、触覚、操作、言語そして運動にかかわりのある部位が決められている。これらの能力のいずれかに特別な振る舞いが見られれば、その原因はその能力に対応する脳の部位の発達状況に帰着されるのである。たとえばメアリーの場合、驚愕反応は聴覚能力の第一段階にあたっていて、それゆえ脊髄と骨髄によって制御されていることになる。
実際の脳の発育過程や脳組織に関する知識にこの発展段階表を照らし合わせてみると、基本的に多くの点で間違っており、その全貌を指摘しつくすことが不可能に近いほどである。紙面の都合上、間違いのなかでもあまりにひどくて話にならないようなものだけを紹介しよう。まず第一に、脳や脊髄は、ドーマンが主張しているように脊髄から脳へと順次発達していくようなことはない。脳−脊髄系はすべて互いに独立して発達するからだ。たとえば、大脳皮質は脊髄がすっかり発育する以前に独自に成長していく。第二に、先に紹介したようにドーマンたちは皮質を四つの異なるタイプに分類しているが、脳のもっとも発達した領域である皮質が、実際どのように区分されるかについてはすでに膨大な研究成果があがっていて、彼らはこうした知識をまったく無視している。皮質組織に関して100年ほど前から知られていた知識と、彼らの区分の仕方とは真っ向から対立しているのだ。
シーンの事例は、ドーマンとデラカトの脳の考え方によく見られる誤りをわれわれに教えてくれる。「平面に見える物体の立体性を触って知覚する」ことができるように教えるためには、まずシーンに温水と冷水で練習させなければならなかった。ところが、温度知覚にかかわりの深い脳と脊髄の領域は、触覚や感触にかかわりをもつ領域とは解剖学的にも機能的にも分離されている。物体の立体性を触って把握するのに必要なのは、当然後者のほうである。だから、温度感覚を媒介する脳の領域に生じた障害を繰り返し練習することで排除できたとしても、触覚を媒介する脳の部位にはなんの効果も及ぼさないのだ。
脳障害のある子供の治療法を開発するような人間は、当然、神経解剖学の基礎を勉強しているはずだと誰もが考えるだろう。ところがドーマンとデラカトに限ってそれがあてはまらない。たとえば「輪郭知覚」は脳橋と呼ばれる脳の下部構造に機能が集中していることになっているが、実際は脳橋には視覚機能はない。輪郭知覚は、通常視覚皮質の機能として知られている。この事実はとくに新しく発見されたものではなく、少なくとも1950年代後半にはわかっていたことだ。また視覚能力の領野にある「形態内部の細部を把握する能力」は中脳の機能だとされているが、そもそも中脳にはそうした視覚機能はなく、細部を把握する働きはやはり視覚皮質に固有のものである。さらに中脳には「有意味な音を聞きわける能力」が宿っていることになっているが、実際には中脳は聴覚刺激に対してなんの役割ももたないのだ。これもまた大脳皮質の機能であり、聴覚皮質として知られている。
ドーマンのいい分では、人間潜在能力開発研究所にはこれまで何百人もの人が子供を連れて現れ、感覚刺激を反復する彼らの治療法が効果を発揮し、子供の状態がよくなったことを報告したらしい。このことはどう説明したらよいのか? 第一にいっておかねばならない点は、ドーマンが脳障害があると認めた子供たちが本当に脳障害を起こしているとは、はっきりといいきれないという点だ。一部の子供たちは、さまざまな情緒的、心理的そして行動上の問題を抱えていた。こうした問題は自然と解消してしまう場合が多い。この問題の自然消滅が、ちょうど両親がせっせと厳しい治療計画を遂行している最中に起きたとすれば、子供の行動面での変化は当然その治療法の効果として評価される。たとえその治療が子供の変化と一切関係をもたなかったとしてもである。第二に、確かに脳のある領域の部位によっては発達が遅れている場合もある。しかし、遅い早いがあっても最終的には普通のレベルに達するのだ。つまり、治療など施さなくとも、放っておけば普通のレベルにまで子供は成長するのである。ここでもまた、両親が治療法を実行している最中にこうした遅れをとりもどすような変化が現れれば、やはり治療計画の効力にその原因を求める傾向が強くなるのである。
健康を売りものにする“いかさま療法”の特徴の一つは、この治療法はどんな病気でも治します、という聞こえのよい口上である。このことを心に銘記しつつ、ドーマンの著書のタイトルを読んでみよう。実に興味深い。『こんな子供をもったらどうしますか?─脳挫傷の子供、脳障害をもつ子供、精神遅滞児、知能に欠陥のある子供、脳性麻痺の子供、けいれん性麻痺の子供、無気力な子供、頑固な子供、てんかんの子供、自閉症の子供、アテトーゼの子供、過敏症の子供』。この本の末尾にあげられている「参考図書」のなかに、アデル・デーヴィスが書いた栄養関係の本が二冊含まれており、そのうちの一冊が『健康に子供を育てましょう』であることもまた興味深い。この本のなかに、少なくとも一人の子供を死にいたらしめたアドバイスが書かれていたことは、すでに述べたとおりである。
実際のところ、脳障害の成人のリハビリテーションを行う正規の治療法でさえ、すなわち言語療法とか理学療法などでさえ、せいぜい限られた効果しかない。成人の脳卒中患者に対する正規の療法の効果について、リンドは「脳卒中患者に見られる機能回復は、主として自然治癒によるものだ」とまとめている。それに脳卒中の後にリハビリテーションを受けた患者のほうが、受けなかった患者よりも回復が速いという研究成果には、重大な方法論上の欠陥があることをドンボヴィー、サンドックおよびバスフォードが指摘している。リハビリテーション療法は、療法士や患者から効果のあるものだと信じられている。しかしその効果の原因は、リハビリテーションが脳卒中の直後から最初の数カ月の間に行われる場合が多いことにあるのだ。つまり、劇的な自然治癒が一番起こりやすい時期にリハビリテーションの期間が重なっているのである。そうした場合、回復の効果はリハビリテーションによるもので、決して自然治癒とはされない。このように、自然治癒にではなくなんらかの治療法に患者の回復の原因を求める傾向が、幼児期の脳障害の場合においてはとくに顕著となる。しかし子供の脳は成人と比べてはるかに小さい。このよく知られた現象によって、ドーマンを代表とするいかさま脳療法士たちが声高に宣伝する“奇跡的”な治癒が事実でないことを説明できるのである。
近年ドーマンの人間潜在能力開発研究所は、これまでの脳障害児の“治療”主体の態勢から方向転換をはかり、普通の子供の知力向上に力を入れ始めた。幼児に早期から読書や筋肉運動などの活動をさせて、能力を高めようというのだ。ドーマンはこの事実を自らの著書、『赤ちゃんの頭をよくする方法』で紹介している。この著作は前著同様、基本的なところで神経解剖学上の誤りだらけなのだが(たとえば、脳の後半分と脊髄は「五本の感覚刺激の入路から構成されていて」、前半分は感覚刺激の出路からなっている、などと変なことを書いている)、幼児に早期の段階でさまざまなタイプの刺激を与えると、その子供の知力発達に好影響を与えるという基本前提は、あながち間違ってはいない。とはいえ、ドーマンが報告している子供の知力の劇的な向上らしきものの数々は、両親と研究所のスタッフの希望的観測と解釈的知覚によるものが多く、実際に子供の能力が飛躍的に伸びたとはいいきれないのである。