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山下昭治(やました しょうじ)

山下昭治 編「生命科学の原点と未来―現代科学への呈言とパイウォーター理論」(造型社;緑書房〔発売〕、1992年4月15日 第9刷)より

総合討論
生物と環境
出席者
(司会)市村武美(大洋漁業(株)大洋研究所)
山下昭治(名古屋大学農学部)
斉藤浩(ハウス食品工業(株)海外業務室長)
高松史朗((株)マリーン・パレス館長)

(略)
山下 生体を構成している水ということでいろいろ調べていきますと、蒸留水や水道水とおよそ違った水であるということがはっきり言えます。
というのは、大きく分けて通常の水中では、高分子の物質はどんどん分解して低分子になるという方向に変化していく。それに対して生体の水の中では、逆に低分子の物質がだんだん高分子になる。つまりアミノ酸のようなものがたんぱく質になるということですから、全くその方向が逆になっている。
司会 エントロピーが逆になるわけですね。
(略)
山下 水の物性そのものが、いわゆる水道水や蒸留水と全く違った状態で生命現象を引き出しているということが感じられるわけです。
今おっしゃった物性と、どこかでかかわり合いを持つと思われるようなことが、私のしらべたところでは一種の鉄塩で誘導される水で起こっているということです。生体中では鉄塩が単独ではなく脂質に乗っかって構成されています。それが先ほど申し上げたような2×10-12モルといったところで生体と同調点を起こしています。この同調点にきますと、これはバラの花を水の中へ入れて水の中で花を咲かせているところですが、完全に同調します。これはサボテンの花ですが、同様のことが起こります。いろんな実験をしてみますと、動物も植物も同調点に関しては全く一緒であるということが出てまいります。
(略)
高松 これは生理食塩水の濃度というわけではなくて?
山下 全然違います。2×10-12モルということですから、これはどちらかというとただの水と思えるレベルです。化学分析は全く不可能です。
(略)
山下 この水─パイウォーターと呼んでいますが─は、通常の分析でいったら、まずは水以外の何物でもないわけです。ところが物性において、これだけはっきりした水があるということになりますと、その水と普通の水で何がどう違うのか、これは実験室で幾らでも調べることができますのでいろいろ調べていきますと、まず第一に通常の水の中では金属塩が必ずイオン解離をする。食塩を入れるとNaプラスとClマイナスに解離をする。これは小学校や中学校の教科書でもそうなっているわけですが、今の濃度の水になりますと、イオン反応が全く起こらない。
(略)
司会 先ほどから水の構造化の話で、H2Oは双極子モーメントで磁石みたいにプラス、マイナスを持っておりいくつかのH2O分子が連結し合っているわけですね。H2O分子をピンポン球だとすれば、全部で12個を限度として詰め込めるはずですが普通の水は4、5個ぐらいしかくっついていないと云われている。ところが構造化した水はもうがっちりくっつき、H2O分子の運動は制約される型になる。
山下 そういうことだと思います。そこではプラスもマイナスも起こり得ないというくらいに、今おっしゃったコンパクトな水になる。
今ではパイウォーターをつくることができますから、いろいろ物性を調べてみますと、いろんな点で違いが出てきます。沸点とか、比重が明らかに違った水ができる。
司会 氷点とかはどうですか。
山下 氷点は0℃で変わらないんですが、ただ、氷結する状態が違ってくるということが言えます。普通の氷というとスケートができるような氷ですが、パイウォーターですと、いわゆるシャーベット状の氷ができる。
(略)

山下昭治 著「生命成立の原理」(造型社、1985年5月1日 発行)より

昭和2年神奈川県生まれ。昭和28年東京大学農学部農芸化学科を卒業、昭和28年〜30年年、同学院特別研究生、昭和30年5月以来、名古屋大学農学部に勤務、現在同大農学部講師。農博。植物栄養学を基礎とした生命科学を専攻。昭和41年3月日本土壌肥料学会賞を受賞。

序 生命のしくみはどうして解明できるか
第1章 花成過程における環境要因の解析
第2章 Phytosinとその花成制御作用
第3章 生命のしくみとPhytosinの物質構成
第4章 Phytosinの非生物的再構成
第5章 生命成立の場─πウォーターシステムについて

福本博文 著「ワンダーゾーン」(文藝春秋、2001年11月15日 第1刷)より

生命水「πウォーター」の謎
(略)山下の肩書は、農学部教授ではなく、定年退職するまで助手だった。(略)

「週刊文春」(1992年4月2日号)

告発!“蛇口産業”の内幕 “奇跡の水”πウォーターは科学的根拠ゼロ(大朏博義)より

こうなれば、現在のブームの仕掛け人である山下氏に直接、「πウォーターは、本当に何にでも効く万能薬か?」と聞いてみるほかない。
再三にわたってインタビューを依頼したが、研究に没頭したいとかでOKが出ず、かわって文書で回答してきた。以下に、その主要部分を紹介しよう。

“生みの親”の意外な回答
まず、自分は研究者として、自然界における物質の存在と物質変化に関する原理を追究してきて、将来も変わらないと基本姿勢を述べる。そして、ブームの現状をこういう。
<世間ではπウォーターに関する商品が宣伝され、販売され、それがあたかも私の理論の応用であり、私が技術指導をしているかの如く、私の名前が使われております。
このことは私にとって大変な迷惑であると同時に、世の消費者の方達を惑わすことにならないかと心配しております。現在、πウォーターという名前のもとに販売されている商品には、私は全く関与しておりません>
では、“山下理論”によってπウォーターなるものは作れるのか、どうか?
<私の理論の実用化には長くて地道な実験と検証の繰り返しが必要であると思います。検証の結果、効果の再現性の認められる方法や製品ならば喜んで推奨したいと思いますが、私が作ったものでもないし、技術指導したものでもない製品については全く責任は持てません>
その理由は、
<πウォーターに含まれる二価三価鉄塩は、分析できないほど微量でなければなりません。従って、製品を分析してその品質を検査するということは、一般には容易なことではありません。ここにも、πウォーターが悪質なコマーシャリズムに乗って行く危険性があるのです>
そして、回答の最後を次のように締めくくっている。
<以上、πウォーターの生みの親として、現在のπウォーター製品の横行に警鐘を鳴らす次第であります>
山下氏の説明を要約すると、
「πウォーターを人工的に作ろうとしても、効果を発揮させる製造技術がまだない。いま出回っているπウォーター製品の効果は大いに疑問である」
ということになる。水道水を夢の水に変えるような製品に関しては、否定的と考えざるをえまい。
実際のところ、山下氏のこれまでの言動を調べてみると、これほど慎重な物言いにはなっていない。みずから“コマーシャリズム”の先頭に立って、“理論の実用化”が完成しているかのような発言も多かった。
しかし、ここではそれをあえて問わない。それよりも、人の健康不安につけ込んで「アレルギーに効く」とか「ガンも治る」などといった、エセ科学的説明でひと儲けしようという“水商売”の考え方のほうが、大きな問題なのである。