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1988年2月23日
毎日新聞 朝刊
健康食品として販売されているゲルマニウムを含有する食品の服用による中毒で鹿児島県内の五歳の男の子が昨年末死亡していたことが二十一日、鹿児島大医学部で開かれた日本小児科学会鹿児島地方会で同医学部小児科から報告された。厚生省の調べでは、ゲルマニウム中毒による障害例は全国で十数例あり、うち死亡したのはこの男の子を含めて四例。
死亡した男の子は一歳四カ月だった五十九年三月、同医学部付属病院で小児糖尿病と診断され、インシュリン投与による治療が始められた。ところが症状に著しい回復がないため、「糖尿病の八〇%は治る」などの“ゲルマニウム療法”を書いた本を読んだ父親が六十年五月から三五ミリgのゲルマニウムを含むカプセル状の食品(商品名「ジェム」)を、インシュリン治療と並行して一日当たり一つずつ飲ませた。六十二年一月ごろになって足がふらつくなどの症状が出始めたが、父親は糖尿病の悪化と考え、一日の服用量を倍の二カプセルに増やした。
この男児は同三月ごろになって糖尿病が治らないばかりか、筋肉の衰えや呼吸障害もあらわれはじめ、五月には全く歩けなくなり同病院に入院した。入院時にはじん臓や肝臓などの内臓障害のほか、人工呼吸器なしでは呼吸できないほど症状が悪化、昨年末じん不全で死亡した。
同小児科が男児の遺体を解剖した結果、じん臓や肝臓をはじめ、ほとんどの臓器から通常は存在するはずのない多量のゲルマニウムの蓄積が認められた。
同医学部小児科の宮田晃一郎教授は「糖尿病が悪化すれば、たしかにじん臓や心臓に障害が出ることはある。だが、この患者のように筋肉が衰え、呼吸にまで支障を来すということは、糖尿病では考えられない。臓器へのゲルマニウムの蓄積を考えれば、ゲルマニウム中毒による死亡としか考えられない。ゲルマニウムは体内に入ると排せつされにくく、大量に長期間服用するのは非常に危険だ」と話している。
父親が読んだという本の著者はゲルマニウムやオレンジ花粉で糖尿病や高血圧などの現代病が治る、と医薬品でないのに薬効をうたって健康食品を販売して昨年十月、警視庁に捕まった健康食品販売会社の丹羽芳男社長。
調べによると丹羽社長は死亡した男の子が服用したという「ジェム」のほか「ロイヤルミックス」「ビューラブル」などを三千五百円から九千円で全国の代理店を通じて販売、栄養療法を書いた著書六冊も出版している。
一方、厚生省は「ゲルマニウムそのものは大量に摂取しなければ実害はない」としている。同省によると、健康食品と銘打って販売すること自体は違法ではない。しかし何らかの薬効があることを容器などに表示すれば製品そのものが薬事法違反になり、また表示がなくても「〇〇に効く」と説明して販売すれば、その販売行為が同法違反に問われる。このため、こうした問題食品も健康食品である限りチェックを受けないことになり、販売行為が薬事法違反で摘発されても「販売禁止」などの措置は取られていない。