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2001年10月25日
毎日新聞
最先端の学問として注目されるバイオテクノロジーの権威が、自らの遺伝子ビジネスに失敗し、最高度のプライバシーである遺伝子情報を含むヒト細胞を借金の担保にしていた。日本ヒト細胞学会の奥村秀夫理事長(68)。倫理上の問題からヒト細胞は新たな採取が難しくなり、水面下で売買される価格が高騰しているといわれる。理事長によると、今回の問題解決を請け負うと称して学会事務局にブローカーも出入りしているという。遺伝子ビジネスをめぐる危うい実態が浮き彫りになった。
奥村理事長は約2時間にわたり、毎日新聞の取材に応じた。一問一答は次の通り。
――なぜ細胞を担保に入れたのか。
相手側は「事業の権利者だから万一のため」と言うし、実業家との間を取り持った連帯保証人も「借金は形式的で、事業が軌道に乗れば億単位の金が入る」と言うのでサインした。
――借金は返せないのか。
利息も払わなくていいはずなのに、損害金を合わせて元本プラス8000万円も要求された。連帯保証人も保証してくれず、計画通りの資金調達も実現していない。今思うと、だまされたのかもしれない。
――強制執行には抵抗したのか。
細胞は遺伝子情報を含む人類の財産であり、(通常差し押さえの対象となる土地などの)不動産感覚で扱うのはおかしいと主張したが、裁判所は不動産として扱い、差し押さえは止められなかった。
――そもそもどうやって入手したのか。
研究用として、学者の間でやり取りしていたものを中心に集めた。誰のものかは特定できないが、日本人のものだ。
――どのくらい価値があるのか。
日本人のヒト細胞株のコレクションは大変貴重だ。4年ぐらい前に、米国のベンチャー企業から数十億円で引き取ると持ちかけられたこともある。(裁判所が専門家に依頼して算定した)評価額の1億6000万円は安すぎるが、そもそも売買の対象にすべきではない。
――そのヒト細胞を担保にしたわけだが。
軽率だった。自宅を担保に3億円以上投資しており、開発資金がほしかった。
――個人的借金の返済に充てたのでは。
それはない。最近も「問題を解決する」と言ってブローカーが何人も学会事務局に出入りした。他人をどこまで信用していいのか分からない。
[毎日新聞10月25日] ( 2001-10-25-03:01 )